しゃくりのやり方/練習方法

しゃくりのやり方/練習方法

カラオケの採点システムで「しゃくり」ってよく聞くけれど「しゃくりって一体どんな歌い方なの?」と思っていませんか?

この記事ではしゃくりの練習方法やお手本となるアーティスト、楽曲をお伝えしていきます。

歌唱指導歴18年の筆者が、しゃくりについて記述のあるサイトを検証し、初心者でも分かりやすい練習方法についてまとめました。

ぜひ、しゃくりのテクニックをマスターして歌唱力アップを目指してください。

しゃくりとは

しゃくりとは目的の音よりも少し下の音から声を出し始めて、正しい音まで持ち上げて歌う歌唱方法のことです。

しゃくり上げるように歌うことから「しゃくり」と言われるようになり、歌唱テクニックのひとつとして定着しています。

人によっては「持ち上げる」や「つり上げる」という言い方をする人もいます。

ロングトーンの入りや、急に音が上がる所に使うことで自然なつながりが生まれ、柔らかい印象を与えます。

また、しゃくりを入れることによって抑揚がうまれ、情感ある心のこもった歌に聴こえるというメリットもあります。

低音を入れるタイミングや長さ、音域によっては、演歌の「こぶし」のような感じになってしまいます。

意図的に長めに低音を入れる場合もありますが、ポップスやロックの場合は短めに入れるのが一般的です。

さらに短く入れると、R&B等のリズム感のある洋楽っぽさを出すことも出来ます。

カラオケの採点では、しゃくりの回数で加点されていくので、頻繁に使った方がいいと思っている人もいるかもしれません。

しかし、1曲の中であまり頻繁にしゃくりを入れてしまうとしつこく感じられ、「くどい」「ねちねちしている」などの印象を与えるので注意しましょう。

練習しなくても自然にしゃくりができている人もいますが、頻繁にしゃくりが入ってしまう人は、正しい音程がとれずに探りながら声を出し始め、音を持ち上げて歌う癖がついている場合があります。

しゃくりを入れずに正確な音を真っすぐに出すことを「音に当てる」という言い方をしますが、音程の悪い人は真っすぐに音に当てることが出来ないためしゃくってしまいがちです。

特に、高音が苦手な人はしゃくってしまうことが多いです。

しゃくりは、表現方法のひとつとして取り入れるもので、本来の音程が分かっていることが大前提です。

まずは正確なメロディーを把握して正しい音を出せるように練習しましょう。

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しゃくりの練習方法

練習法としては、いきなり曲を歌って練習するのではなく、まずは単音から始めてみましょう。

ピアノやギターなどで自分の出しやすい音を確認し、単音で確実にその音に当てることから始めます。

楽器がない人は、ピアノ等のスマホアプリを使うといいでしょう。

正確に目的の音がとれているかを確認するためには、録音することをおすすめします。

このときの発音は、なるべく喉が開きやすい「ま」や「な」、「は」で行います。

日本語の母音は喉声になりやすいので、初心者の人は「あ」は避けた方がいいでしょう。

確実に目的の音に当てることが出来るようになったら、その音より半音~1音低い音で声を出し、次に目的の音を出します。

このとき、2音めの目的の音は母音になります。

2つの音がブツっと切れた感じにならないように、なめらかに繋がるイメージで声を出しましょう。

これを何度も繰り返します。

初めのうちは、2つの音は同じ長さで構いません。

なめらかに出せるようになったら、1音めの低音を短くしていきます。

慣れてきたら、他の発音や音程も練習してみましょう。

次に童謡などの簡単な曲で練習していきます。

例えば「チューリップ」では、サビの「どの花みても」の「ど」や「み」など、音が上がる所に入れてみるとやりやすいです。

文字で書くと「どぉ⤴のはなみぃ⤴てもー」といった感じになります。

歌ってみると分かると思いますが、あまりたくさんのしゃくりを入れるとくどい印象になってしまいます。

チューリップの場合は、Aメロにしゃくりを入れるのは控えめにした方がいいでしょう。

どこにしゃくりを入れるかは曲によっても違いますし、歌い手さんの好みや感性にもよります。

どこに入れたらいいか分からない場合は、しゃくりの入っている歌を完全に真似てみてください。

何曲か真似して歌っているうちに、どこにしゃくりを入れたら心地よく聞こえるか、感覚として分かってきます。

参考になる練習動画を紹介しますので、自分に合った練習方法を探してみてください。




【簡単ボイトレ】歌うまになるテクニック「しゃくり」


しゃくりがどんな歌い方か分からない人におすすめの動画です。

この動画を見れば、しゃくりがどんな歌い方か分かります。

  • ストレートな発声と、しゃくりを入れた発声の違い
  • 母音で目的の音に当てるやり方をゆっくり実演
  • どこにしゃくりを入れたら効果的かを詳しく解説




歌が上手い人は“隠れしゃくり”を使ってます【歌ウマの秘密】

筆者一押しの動画です。

しゃくりあり/なしを実際に歌って分かりやすく解説しています。

  • 音に当てるとはどういうことか
  • 3種類のしゃくりについて詳しく解説
  • 動画を見ながら、しゃくりあり/なしを一緒に練習
  • 公式LINEに友達追加で、歌声添削が1回無料の特典あり

【歌唱テクニック】抱きしめたい / Mr.Children しゃくりちゃんと使えてますか?【ポルタメント】

しゃくる時の1音めの低音をどの音で出したらいいかを詳しく解説しています。

不安定な音程にならないために必見の動画です。

  • イラストを使ってしゃくりを分かりやすく説明
  • しゃくりを細かく分解してゆっくり実演
  • 実際に曲を歌って動画と一緒に練習

【ボイトレ】歌うまになりたいならコレをマスターすべし!【しゃくり・フォール】

ストレート・ゆっくり・速いの3パターンを何曲か実演してくれているので違いが分かりやすいです。

R&B等の洋楽が好きな人には特におすすめの動画です。

  • 動画を見ながら一緒に練習
  • しゃくりあり/なしを聞き比べ
  • しゃくりとは逆のフォールについても解説

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しゃくりの綺麗な歌手

綺麗なしゃくりが入ることで情感や抑揚が感じられ、歌がうまく聴こえます。

カラオケ採点でもテクニックの面で高得点を得られるでしょう。

現在では、ほとんどの歌手の皆さんがしゃくり等のテクニックを使っています。

しゃくりの綺麗な歌手には一体どんな人がいるかを見ていきましょう。

参考になる曲と、その曲の聴き所もお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。

男性歌手

三浦大知

<経歴>

6歳の頃から沖縄アクターズスクールに通い、歌とダンスを始める。

Folderのメンバーとして芸能活動を開始し、9歳でメインボーカルを務める。

マイケルジャクソンの影響を強く受け、自分もオリジナルな存在でありたいと語る。

日本のみならず海外での評価も高い。

2022年に朝ドラの主題歌に「燦燦」が抜擢され、国民的な人気を得る。

<実際の曲と聴き所>

歌って踊れるソロのR&Bアーティストとして唯一無二の地位を築いている三浦大知さん。

ストレートに歌う部分としゃくりを入れる部分を巧みに使い分ける歌い方は、意図的なら天才、感覚的なら神と思うほどです。

最新曲「燦燦」で、その使い分けをよく聴いてみてください。

以下、小文字のひらがな表記の部分はしゃくり、「ー」部分はストレートに歌っています。

Aメロ:遠ぉく 

Bメロ:手を鳴らしてぇ 

サビ:届いてぇ

サビ:いつーも わらいーながら

日本人離れしたその歌い方を完全に真似するのは少し難しいかもしれませんが、是非参考にしてみてください。



藤原聡(Official髭ダンディズム)

<経歴>

Official髭ダンディズムのボーカル・ピアノを担当。

幼少の頃からクラシックピアノを習い始める。

大学在学中に同じ軽音楽部の仲間に声をかけてバンドを結成。

2015年にインディーズデビューしたのち、TV主題歌を担当しメジャーデビュー。

以後、ミリオンやプラチナなどのヒット曲を数多く生み出している。


<実際の曲と聴き所>

伸びのある安定した高音が最大の魅力の藤原聡さん。

素直な歌い方をしているほうですが、彼もほとんどの曲でしゃくりをしています。

中でも参考にして欲しいのは「Pretender」です。

サビの声を張り上げる所はもちろんですが、Aメロの「ストーリー」や「通り」などの韻をふむ所のしゃくりがとても自然で綺麗なのです。

ロングトーンではないので少し難しいですが、何度も真似してぜひ習得してください。



藤井風

<経歴>

幼少期よりクラシックピアノを習い始める。

12歳から始めたYouTubeの弾き語り動画で注目を集め、19歳の頃にはチャンネル登録者数が1万人を超えていたという。

2019年に上京し本格的に音楽活動をはじめ、2022年の音源デビューの前からライブチケットが即完売するほどの圧倒的な人気ぶりをみせた。

若い世代だけでなく、中高年層からの指示も広がっている。


<実際の曲と聴き所>

囁くようなウィスパーボイスが魅力の藤井さん。

しかし高音では一転、張りのある力強い歌声が胸に響きます。

彼のしゃくりがよく分かる曲は「きらり」です。

Aメロでも頻繁にしゃくりを使っていますが、分かりやすい所はサビの「どこいたの」の「た」、「探してたよ」の「た」です。

この曲はリズム感も養われるので、ぜひ1曲通して練習してみてください。

女性歌手

絢香

<経歴>

高校時代に、大阪から福岡にある音楽スクール「音楽塾ヴォイス」に片道4時間かけて通い、音楽理論を学ぶ。

「音楽塾ヴォイス」で制作したデモテープをきっかけに、2006年にメジャーデビュー。

デビュー曲「I believe」はオリコンチャート初登場で3位という快挙を達成。

同年、日本レコード大賞最優秀新人賞を受賞、年末のNHK紅白歌合戦に初登場を果たす。

他のアーティストとのコラボや楽曲提供の他、カバーアルバムを発表するなど、活動の幅を広げている。


<実際の曲と聴き所>

圧倒的な歌唱力を誇る絢香さん。

彼女の歌のルーツはゴスペルとのことなので、ブラックミュージックに通じる歌い方は納得です。

しゃくりのお手本として筆者が今回選んだのは「I believe」です。

しゃくりを多用しているイメージがありますが、実は意外に少なく、サビの高音は声をストレートに出していることが多いです。

「I believe」では、Aメロでしゃくりとストレートを上手に使い分けています。

Aメロ部分をよく聴いて、その使い分けを把握してください。



あいみょん

<経歴>

祖母と父親の影響で幼少の頃から音楽に触れて育つ。

高校生の頃から作曲を始め、友人がアップしていたYouTubeの音楽番組に出演、この動画がきっかけとなり、デビューが決まる。

2015年にインディーズデビューしたのち、2016年にメジャーデビューを果たす。

本人は自分の音楽性について「まだ定まっていない」と語っているが、歌詞を大切にした楽曲は同世代の若者から多くの指示を集めている。

<実際の曲と聴き所>

全般的に素直な歌い方のあいみょんさんは、しゃくりが少なめです。

ですが、要所要所に使うしゃくりがとても自然で、なおかつ分かりやすく、参考にするにはベストな歌い方です。

特に分かりやすいのは「マリーゴールド」のサビ部分、「麦わらの帽子の君が」の「き」、「もう離れないで」の「い」です。

他のカ所でもごく短いしゃくりが入っていますので、じっくり聴いてみてください。


松田聖子

<経歴>

1978年「ミス・セブンティーンコンテスト」の九州大会で優勝したことをきっかけに1980年「裸足の季節」でデビュー。

同年、日本レコード大賞新人賞を受賞、年末のNHK紅白歌合戦に初出場を果たす。

結婚・出産後も歌手活動を続け、母親となってもアイドルを続ける姿が「ママドル」と呼ばれるようになった。

1996年発売の、彼女が作詞作曲を手がけた「あなたに逢いたくて〜Missing You」は自身初のミリオンセラーとなる。

近年は、JAZZアルバムを発表するなど精力的に活動を続けている。

<実際の曲と聴き所>

筆者が一押しするしゃくりが綺麗な歌手はデビュー当初の松田聖子さんです。

最近の彼女は、ややねっとりとした歌い方をしていますが、デビュー当初は勢いのある伸びやかな歌声で、他のアイドルとは比べ物にならない歌唱力でした。

しゃくりのお手本としておすすめしたいのは、セカンドシングル「青い珊瑚礁」の歌い出しです。

2021年にアルバムでセルフカバーした同曲と聴き比べてみると、その綺麗さがよく分かります。

当時はその歌い方を良しとしない意見もありましたが、嫌味のない素直な歌い方と透明感のある歌声は多くの人を魅了しました。

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